イギリス誌/LONDON
「モシモシ寿司」の社長、キャロライン・ベネット氏はロンドンにあるリバプールストリート駅の店鋪デザイン
を特別なものにしたいと考えていた。そして彼女は東方を検索した結果、日本人デザイナーの兼城祐作氏と出会
えたのである。リバプールストリート駅の「モシモシ寿司」が1月19日にオープンした。改装工事は最終的に
3ケ月を要した。本来ならば2ケ月のはずだったのだが、クリスマス中の2週間は全て工事がストップしてしま
ったためだ。キャロライン・ベネット氏が最初に改装を考えはじめたのが1年前で、最終的に日本人アーキテク
トデザイナーの兼城祐作氏に委任される事になった。「もともとちゃんとした計画というのはありませんでした」
ベネット氏は私に言う。彼女は空間が生かされた兼城氏の店鋪デザインを実際日本で見て驚き、そして彼が既に
500件ものレストランデザインを請け負ったという事実に感動したのである。「西洋のほとんどのデザイナー
と違い、彼はレストランの仕組みを全て知っていたのです」と彼女は言う。ベネット氏は、ただ彼にレストラン
をデザインして欲しいとのみ依頼をした。だが、兼城氏は店鋪設計だけに止まらずレストランにおけるメニュー
やオペレーション、ニーズに合わせた客席配置やグラフィックに至るまでをアドバイスし、現場の調査を重ねた
上で中に座る事のできる巨大な卵を完成させたのである。インタビューで兼城氏は、”限られた空間に最適で、
しかも日本的である何か”を作りたいと志を語った。ここでそれは木や石、和紙製のディスプレイ、カウンター
に使われた畳などのシンプルな日本の素材を意味する。一番のチャレンジは何だったかと私は彼に質問した。兼
城氏は笑って「言語です」と答えた。ベネット氏にとってはと問うと、「西洋建設業者にとって新しいスタイル
であった事ではないか」と示唆する。最も厳しかった問題としては、「鉄道業者からのよくある不条理な要求」
であったと彼女は話す。
 とうとうやってきたオープンは宣伝なしであったにもかかわらず大成功だったので、皆は安堵のため息をつい
た。さて、大仕事の後の教訓としてもう一度全ての事をやり直せる機会があるとしたら、どこか違うようなやり
方でするのだろうか?と質問した。「しないでしょう」ベネット氏は言う。そして「かなりの事がプランどおり
に進みましたので全てに満足しています。」と付け加えた。兼城氏に至ってはと言うと、「もし選択があるとし
たら、イギリス人建設業者は使わないだろう…(笑)」と冗談まじりに答えた。
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