【コラム2】 『風は南から』 ―兼城祐作―
 既成の概念なんて「蹴飛ばしてやれ!」と思ってるぐらいが丁度よい。
自分の殻を突き破り、出る釘になるべきだと私は考えている。
ただ、それを貫き通す為には、打たれても挫けない覚悟が必要である。
 暴言かもしれないが、この国ではオリジナリティーを持つと叩かれる傾
向にある。均一の価値観と謙虚さを求められ、島国根性から抜け出せない
現状があり、沖縄においても例外ではないだろう。
 海外での仕事を手掛ける時に感じることだが、今や店鋪デザインは国境
を越えて、本格的なボーダレス化を迎えている状況にある。
日本における店鋪デザイン・設計は、過去の“模倣の時代”に始まり、現
在の“確立の時代”から未来への“変革の時代”を迎えた感があり、店鋪
デザイン業界は大きな転換期にあると言えるのではないのだろうか。
 予測できないスピードで変化し続ける混迷の時代において、店鋪デザイ
ンを取り巻く環境は多様性を増してきている。バブル崩壊後の競争原理に
よる内的刺激や、近年のグローバル化による外的影響で、デザイナー自身
の意識改革が必要とされ、様々なデザインスタイルが確立されてきた。
その中でも横並びで保守的なデザインが相変わらず多く、主流である事は
否めないが、予測不能の“挑発的デザイン”が支流として存在し、個性溢
れる斬新なデザインが生まれくる状況が憶測できる。
 沖縄においても同様の構図があてはまり、コトナカレデザインが氾濫し
ている。しかしながら、沖縄文化に触発された独自のオキナワンデザイン
が存在しているのも確かである。だが、その現状に満足ぜず、そこを超え
ていかなければいけない。その為には、沖縄を踏み台にし、破壊と構築を
繰り返し試み、どこにも属さない新しい風を吹かせなくてはならない。
 デザインする行為とは、積み重ねながらも捨て去る勇気が必要であり、
衝動に駆り立てられ突き抜けていくものである。完璧で綺麗なカタチより
も、不完全で不恰好な“未完成なカタチ”の方が美しいのかもしれない。
 私は自分自身の原点を見失う事なく、そこにしか存在しない“独創的で
自由なカタチ”を追求していく姿勢が必要だと考えている。言わば、店鋪
デザインにおける創造とは表現者としての「自分自身との戦い」であると
言えるのではなかろうか。
 アジアの片隅に浮かぶちっぽけな島ではあるが、刺激的で熱い風は南か
ら吹いて来るものである。
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